シリアルイノベーター研究会

2013 - 2015

成熟企業の中で連続的にイノベーションを起こす、シリアルイノベーター。シリコンバレーなどに典型的な連続起業家と比べ、メディアで取り上げられることが少ないものの、企業を飛び出さずにイノベーションを起こし続ける人材こそ、企業が成長を続ける鍵となるのです。

シリアル・イノベーターにいち早く着目したのが、イリノイ大学のアビー・グリフィン教授、ブルース・A・ボジャック教授(写真1枚目)、レイモンド・L・プライス教授(写真2枚目)です。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社やヒューレット・パッカード社など米国の成熟企業におけるイノベーターを10年以上に渡って研究してきた彼らの知見は、日本の企業社会に大きなヒントとなる。そう確信したリ・パブリック共同創業者の田村大、市川文子は彼らの著作を監訳。2014年にプレジデント社より刊行した「シリアル・イノベーター 『非シリコンバレー型』イノベーションの流儀」から見えてくるのは、改めてイノベーションはイノベーターの存在なくしては起こり得ないというシンプルなこと。プロセスや制度、人事システムといった外枠によってではなく、技術的な壁や事業化の壁にぶつかりながらも、自ら開発を牽引する人の存在あってこそ、あらゆるイノベーションは生まれてくるものです。
顧客・技術・市場を行き来しながら、複数の役割を一気通貫して担うシリアルイノベーターがたどる道のりは、各担当者がそれぞれの段階で限られた役割を担うステージゲート型のプロセスとは全く別物です。

翻って、日本は100年以上の歴史を持つ企業が今日に至るまで数多く存在している、世界にも例を見ないほどの老舗企業大国と言えます。こうした企業はいかにして、市場の信頼感を保ちながらも、市場を惹きつけ続けるイノベーションを起こし続けられるのでしょうか?
リ・パブリックは同書の日本版刊行と並行し、著者のボジャック教授、プライス教授と連携して、2013年に日本でシリアルイノベーター研究会を発足しました。複数の企業から人材育成やイノベーションに携わる人々が研究会メンバーとして参加し、実際に市場で大きな成功を収めた製品やサービスについて、その開発と事業化を牽引してきた方々に直接インタビューし、共同研究を行いました。1期目(2013-2014)には、成熟企業特有の課題とシリアルイノベーターの関係性や日米のイノベーションの比較研究を、2期目(2014-2015)には、シリアルイノベーターの誕生と成長に着目し、参加企業内外のイノベーター30名ほどにインタビューを実施。そのライフヒストリーを紐解きながら、重要なターニングポイント、関係者、環境を探り、シリアルイノベーター誕生のポイント、成長のプロセスをモデル化しました。

この成果は現在、企業向けにデザインする研修プログラムや、自治体と協働しての地域創生事業まで、リ・パブリックが行うさまざまな活動に活かされています。

私たちは、このようなThink(研究)の活動を複数の企業と協働しながら推進し、見えてくる知見をさまざまなDo(実践)の基盤としています。

VOICE

市川文子 (リ・パブリック共同代表)

企業内で新しい製品やサービスを世に出し、時にはまったく新しい事業領域そのものを生み出し続けるした人物たち。彼ら/彼女らのアイディアの新鮮さや創造性の高さはもちろんですが、それ以上に、巨大な組織の中で複雑化するシステムをものともせず、革新的商品/サービスを社会に届けるプロセスに一貫して関わり続ける、彼らのバイタリティや調整力の高さが際立っていました。国境を超えて共通する、シリアル・イノベーターたちの強くしなやかなふるまいは、成熟企業が更なるイノベーションを起こすための人材、環境の構築にさまざまな示唆を与えてくれています。

CREDIT

アドバイザリーボード

  • ブルース・A・ボジャック教授
    イリノイ大学
  • レイモンド・L・プライス教授
    イリノイ大学

第1期参加企業

  • 味の素株式会社
  • 花王株式会社
  • コクヨファニチャー株式会社
  • トヨタ自動車株式会社

第2期参加企業

  • 味の素株式会社
  • コクヨ株式会社
  • 小林製薬株式会社
  • トヨタ
自動車株式会社

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