サーキュラーデザインプラクシス(CDP)のシンポジウムを開催します!

 

昨年8月、サーキュラーデザインプラクシス(CDP)のプレ・カンファレンスを開催してから1年が経ちました。今年も京都会場/オンラインでシンポジウムを開催します。

今日、サーキュラーエコノミーあるいはそれに資するデザインとしてのサーキュラーデザインは、地球温暖化問題や環境汚染問題を解決するための手立ての一つとして捉えられています。しかし、これらの問題は、資源枯渇や食物危機、地域間の経済格差やその根幹にある人種差別、生物多様性の劇的な減少といったほかの様々な Wicked Problem(厄介・意地悪な問題)と複雑に絡み合い、“ecosystem of wicked problems”を形成しています。そのため、サーキュラーエコノミーへの移行=Transitionは、これまでの線形的な資源フローを循環的なものへと転換するだけではなく、同時に、上の問題群の根底に共通する価値観や世界観を更新することで初めて可能となります。

本シンポジウムでは、この移行=Transitionをいかにデザインすべきか、その際の産業生態系やそれを取り巻く制度設計や人材育成はどうあるべきか、そしてこのデザインプロセスを下支えする新たな価値観や世界観はいかに獲得できるかなどについて、多様なバックグラウンドを持った有識者とともに議論を深めます。

Circular Design Praxis (CDP)とは「学術・企業・地域をつなげ、システム変化をともなう
サーキュラーデザインを育み実践するためのネットワーク」です。詳細につきましては、CDPウェブサイトをご参照ください。 なお、本シンポジウムは、京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab設立 10周年イベントの一環として開催されます。

 

Day 1:8/26(土)9:30 – 18:10(最長)


〈Greetings 9:30-10:15〉
シンポジウムの目的や流れを共有し、参加者同士の簡単な顔合わせをする。

〈Session 1-A 10:20-12:00〉
自律分散的な資源循環:Autonomous, Distributed and Circular Flow

ギガトンの氾濫とも呼ばれる大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会をいかに脱却し、適量生産・自律分散・資源循環型の社会に移行するか。製品の環境負荷や循環性をデータ共有するデジタル製品パスポートの政策や、デジタルファブリケーションにより都市の自律性を高めるファブシティの実践など、デジタルデザインを用いたアプローチが模索されている。国際社会や国のマクロな環境政策の動向をつかみ、地域資源循環プラットフォームの萌芽的事例を参照しながら、ありうる未来の資源循環について具体的に議論したい。

  • 田中浩也(慶應義塾大学環境情報学部教授、慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センター長​​)
  • 田崎智宏(国立環境研究所 資源循環社会システム研究室長)

〈Session 1-B 13:30-15:10〉
ビジネスとインダストリアル・エコロジー:Business and Industrial Ecology

循環や連携に基づく産業生態系は、Journal of Industrial Ecology の発刊(1997年)を端緒に、通産資料調査会​​による『産業と環境』(1998年)の特集や原田幸明らの尽力によってライフサイクル思考と連携しながら発展を遂げてきた。しかし、依然として生産時のゼロウェイスト化や、廃棄物の再利用やインバース・マニュファクチュアリング、あるいはシェアやレンタルなどの余剰資源の有効活用など、持続可能な経済・技術的システム構築は道半ばである。消費者の行動変容を含むシステミックな産業構造の変化には今何が求められるのか、有識者らと共に多角的に議論する。

  • 奥林里子(京都工芸繊維大学繊維学系教授、京都大学生存圏研究所特定教授)
  • 天沢逸里(東京大学先端科学技術研究センター 特任准教授)
  • 河内幾帆​​(金沢大学国際基幹教育院 准教授)

〈Session 1-C 15:30-17:10〉
土着のふるまい:
Place-Based and Indigenous Practice

前近代から継承されてきた各地域にざした知恵は、近代が見過ごしてきた多元的な視座を有している。そうした土地に根ざした知恵を顕在化させ、共有知とすることは今後のサーキュラーデザインの展開にとりどのような意味を持ちうるのか。加えて、地球環境問題は巨視的にはグローバルな課題でありがなら、ローカルに固有な要件の複雑な絡み合いが連鎖するかたちで起こっている。そうした土地固有の文脈をいかに取り扱うべきか、議論を深める。

  • 中村 寛* (多摩美術大学リベラルアーツセンター教授/サーキュラー・オフィス担当、アトリエ・アンソロポロジー合同会社代表、KESIKI Insight Design担当)
  • 岩瀬大地(東京造形大学造形学部准教授、TZU DESIS Labディレクター、一般社団法人スペダギジャパン理事)
    *中村氏のみオンラインでご登壇予定。

Day 2:8/27(日) 9:30 – 17:00


〈Reflection 9:30-9:55〉
初日のセッションを振り返り、議論や課題を整理する。

〈Session 2-A 10:00-11:30〉
土地に根ざすサーキュラーデザイン

土地に根ざした(=place-basedな)サーキュラーデザインを実践するためには、それぞれの土地に特有の資源や利害関係者、そしてその土地を取り巻く自然環境の間に立ちあがる関係性、すなわちその土地のエコロジーを再構築する必要がある。この作業を進めるにあたっては、資源の特定や利害関係者の巻き込み、外部との連携など、戦略的な判断が多々求められる。このセッションでは、滋賀県は長浜に色濃く残る江戸時代の循環型社会を基点としながら、現在進行形で土地に根ざしたサーキュラーデザインを実践する方々をお呼びして、そうした活動の土台となるエコロジーを(再)構築するにあたっての課題や可能性についてお話していただく。

  • 西塔大海(合作株式会社 取締役)
  • 曽我修治(日立製作所 研究開発グループ デザインセンタ プロジェクトマネージャ)
  • 湯浅亮平(慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特任講師)

〈Session 2-B 12:00-13:00〉※Session 2-Cと同時開催
サーキュラーデザインの人材育成

効率性を追求した大量生産を前提とする近代的なデザインに比べ、サーキュラーデザインの実践は、物質が実際に循環する土地の伝統や風土、その土地に生きる利害関係者やその場を取り巻く自然環境といった多様な要素の上に成り立っている。このことは、従来の、教室やアトリエである程度完結していた学習環境から、土地ごとの文脈に深く入り込むことを可能にする、より社会的で実践的な学習環境への移行が求められていることを意味している。この新しい学習環境はどのような要素で構成されているのか、また、その環境を整備する上でどのような課題があるのか。このセッションでは、新たなデザイン教育のあり方を実践を通して模索している大学関係者をお呼びして、循環型社会への移行を担う人材が育まれる学習環境をいかに整えるべきかについて議論する。

  • 工藤尚悟(国際教養大学 准教授)
  • 水野大二郎(京都工芸繊維大学 教授、慶應義塾大学大学院 特別招聘教授)

〈Session 2-C 12:00-13:00〉※Session 2-Bと同時開催
サーキュラーデザインの制度設計

2022年4月にプラスチック資源循環促進法が施行され、プラスチック使用製品のライフサイクル全般に関わる多様なステイクホルダーの取り組みを促進する基盤が整った。環境配慮設計の標準化や認定制度の整備についても今後、製品分野ごとに進められることが予定されており、サーキュラーエコノミーへ移行するための効果的な第一歩として注目が集まっている。しかし、土地に根ざしたサーキュラーデザインの実践を社会に広く促すためには、このほかにも関連法制度との関係性の整理、再生品の基準・ルールの整備、プラスチック以外の資源に関する環境配慮設計の促進策、官公庁の調達制度の刷新など、さまざまな制度的な課題を解決する必要がある。このセッションでは、制度設計の観点から、いかにサーキュラーデザインの実践を促進するための環境が整備できるかについて議論する。

  • 早渕百合子(九州大学グローバルイノベーションセンター 准教授)
  • 峯村昇吾(造形構想株式会社 代表取締役、株式会社図解総研 取締役CDO)

〈基調講演 14:30-16:30〉
赤間陽子
(ロイヤルメルボルン工科大学 准教授)

 

参加をご希望の方はPeatixのイベントページからチケットをご購入ください
https://peatix.com/event/3625334

※会場参加は満員となりました。ありがとうございました。オンライン参加のみ引き続きお申し込みを受け付けております。

 

【対象者】
サーキュラーエコノミー(循環経済)やサーキュラーデザインに興味を持つデザイナー、企業や個人のビジネスパーソン、大学・研究機関の研究者、地方・中央行政関係者など。

【定員】
会場参加(一般):Day 1・Day 2 各日程 20名程度
オンライン参加:定員なし

*要事前申込み、申込先着順
†チケット購入者は1ヶ月限定でアーカイブ動画が閲覧できます。
‡京都工芸繊維大学の学生は参加無料となりますので、無料コードを使ってお申込みください。

【主催・運営】
京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab、(株)リ・パブリック