「わたし」から始まる、自律分散型のビジョンデザイン|第3次日置市総合計画策定プロジェクト

2024-2026

鹿児島県日置市の2026年度から2035年度までのビジョンを示した「第3次日置市総合計画」の策定プロセスに、リ・パブリックが2年間伴走しました。

本プロジェクトでは、行政主導のトップダウンな計画策定ではなく、市民一人ひとりが自らの「ありたい姿」を探求するプロセスを重視しました。市民が自律的に活動する「ひおき未来探検隊(通称:まるひ)」という活動体を構想し、市民と共にフィールドワークや対話をおこなうことで、これからの地方政府と市民の新たな関係性を問い直しました。

平成の市町村合併や地方自治法の改正により、かつて自治体に義務付けられていた「総合計画」の策定は、現在は各自治体の任意となっています。こうした状況下で、あえて総合計画を作る意味とは何か。日置市は、単なる行政文書の更新ではなく、旧4町の合併から20年を経て多様な個性が集まり育ってきたこの街において、改めて「日置市としてどうありたいか」を市民と共有することを目指しました。

本プロジェクトの目的は、日置市の総合計画の策定であるとともに、自治体の計画策定におけるパブリックコメントや審議会といった従来の形式的なプロセスに則るのではなく、計画の「つくり方」そのものをアップデートすることでもありました。行政サービスの受け手であった市民が、これからのまちをともに創る「担い手」へと変容していくプロセスそのものを計画策定の核心に据え、目指す未来を「日置のありたい姿」として掲げました。

市民が自らまちの可能性を発掘し、フィールドワークや対話を通じてビジョンを練り上げる「ひおき未来探検隊」の活動を中心として、本プロジェクトは3つのフェーズで実施しました。

●分野を横断する問いの共有
まずは市民と市役所が同じテーブルにつくための「問い」を設定。「教育」や「産業」といった行政用語を、「全世代の学び」や「経営」「働き方」といった、暮らしの手触りがあり、縦割りになりがちな政策分野を横につなぐ言葉として掲げました。

●自律分散型のフィールドワーク
20の「問い」に基づき、市民リーダーが隊長となって探検隊を結成。問いに基づき、自治会への参加やワークショップの企画・実施など、多岐にわたる現場とテーマで実際にまちへ出て、延べ26回にわたる自律分散型のフィールドワークを実施しました。

●一人ひとりの思いをビジョンへと翻訳
フィールドワークで得た気づきを全市民に共有し、そこから得られた膨大な市民の声を、8年間のロードマップへと凝縮。さらに、市役所職員がこれらを自身の業務や総合計画へと翻訳する全4回のワーキンググループを実施し、市民の描いた「ありたい姿」を実行可能な計画へと落とし込みました。

すべてのフェーズを通じて、「総合計画の策定」という硬い行政用語はできるだけ使わずに、市民の主体的な参加をいざなうようなビジュアルアイデンティティを制作しました。ひおき未来探検隊、通称まるひのロゴは、日置というまちの可能性を再発見するためのシンボルとして、大人だけでなく子どもがみてもワクワクできる「探検」をイメージする虫眼鏡のデザインとし、ロゴマークをあしらった旗は、各探検隊がそれぞれ実施するフィールドワークが「まるひ」という一連の活動体であることを示しています。

2年間にわたる策定のプロセスを経て完成した総合計画書は、市民が手にとって読んでもらえるように漫画やイラストをふんだんに取り入れ、各世帯に配布される概要版は、日常的に目に留めてもらえる工夫を施すなど、最終的なアウトプットにも力を注ぎました。

しかし、この2年間の最大の成果は、完成した総合計画そのものではありません。策定のプロセスを通じて「自分たちが暮らすまちの未来は、自分たちで描くことができる」という確信が市民や職員の中に芽生えたことです。この自律的な活動の連鎖こそが、日置市がこれから8年間をかけて育んでいく、新しいまちづくりの姿です。

CREDIT

第3次日置市総合計画(本編版および概要版ポスター)

  • 発行
    日置市 総務企画部 企画課
  • 制作
    株式会社リ・パブリック
  • イラスト
    大寺聡
  • 漫画
    深川優
  • デザイン・撮影
    藤匠汰朗